SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

"DIFFERENT" by ヤンミ・ムン

ファイル 2016-04-03 14 05 50.jpeg

原題は“DIFFERENT”。ビジネスで、と言っても、事業計画に関する話ではなく、商品のブランディング、マーケティング戦略上の心得について書かれた本だ。競合他社との差別化競争に明け暮れるあまり、消費者には違いがわからないほどの微々たる差を競い続けて、結果、消費者から愛想を尽かされる。このような無意味な差別化に対し、警鐘を鳴らしている。

「もっともっとが当たり前になっているときこそ、少ないことの価値が生まれる」「神は細部に宿る」と説いているあたり、ドイツのモダニズム建築家ミースの”Less is more.”の思想に少なからず影響を受けているようだ。より少ないことは、より豊かなこと。建築から転じて、過度の物質的成熟社会への警鐘としてもよく使われる。

著者が提案するアイデア・ブランドの3戦略は、いずれも「逆張り」戦略である。マーケティングの定石や、世の中のトレンド、たいていの人が選択する方法など、常識的な流れに逆らった動きをすることで、消費者に愛着を持ってもらう価値を生み出そうとするものだ。が、これは言うは易しで、実際には、「逆」を取ることはハイリスクで儲けが少ないと想定される場合が多いがゆえに、「逆」と呼ばれ、警戒されているのである。この点を直視して、ちゃんと事業計画上の勝算を見込んだ上で勝てた例があるのか、いやそこは起業家の信念に依って立ち、事業計画無視で逆張りするのか、という一番知りたいことが書いていなかったので、残念だった。ケーススタディも、ここまで書いてくれると読む価値が増すのだが。

「消費者と同じ目で見ることが重要。消費者の目にはぼんやりとカテゴリー全体が見えるだけで、個々のブランドまでは映っていない。この不鮮明さから抜け出すこと。それが、“違っている”ということなのだ」というのはおっしゃる通り。競合他社との不毛な競争に没頭していると忘れてしまうポイントである。が、みなが逆張りを狙い始めると、今度は逆が逆でなくなり、順張りになってしまう。そのジレンマについても、書かれていなかった。取り上げられた事例は、偶然の産物も多く、事業とはそうした幸運を味方につけることができるかどうかも成功要因として重要なのだ、と言われてしまうのであれば、それまでなのだが。

 

この本は、ブランド選好という論点にとどまっているのだが、せっかくの機会なので、ブランドから一歩視点を拡げてみたい。今後の日本再興を考えたときには、ただブランドに愛着を持ってもらうだけでは足りない。商品やサービスを通して、買ってくれる消費者に、従来にはなかった考え方や、暮らし方を提案していく必要がある。個人的には、人口減少共働き時代でも日本に住む人々が楽しく暮らせるために、独自のサービス構築を通して貢献したい。具体的なサービス提案による、漠然とした悲観論の払しょく。子どもたちにまで他人事の日本衰退論や悲観論が伝染しないように、親たちから元気にしたい。遅ればせながら、虚業ではなく、実業で。