SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2007/2/26 鍛え上げられた五感

ある忙しい朝、四歳の息子がつぶやいた。「人間はもっとゆっくりしたいのに、時計はどんどん進んでいっちゃうからずるいよね」。ゆっくりするのが豊かなことだとわかるのか。夕焼けのあとは夜が来る、お腹がすいたらご飯の時間というように、子供は時計が読めなくても、時の流れを体で感じとる。

職場では、自宅からマイボトルを持ってくる女性社員が増えている。出勤前にお茶を淹れる時間を作るのは、心の余裕のなせる技だ。ゆったり過ごすことで、時の流れを味方につけている。

時間に追われ、知恵を絞ることにとらわれると、自分が自然の大きな流れの中で生かされていることを忘れてしまう。頭でっかちのマニュアル人間が増えるなか、これからの時代に必要なのは、鍛え上げられた五感だと思う。

植物を原料とする染色古法の継承者である染織史家の吉岡幸雄氏は、あるリハビリテーション病院のカラーコンサルティングをしたときに、それまで病院ではタブーとされていた「青」も使った。結果、患者さんの入院期間は平均より短くなったという。「観念で事を運ばないほうがいい。私は自分の知恵ではなく、先人と自然の知恵を尊重します」という言葉が胸に響いた。