SAILING POEMS

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電通報2003/3/10 曖昧な空間

何か新しいものを創りたかったら、頭の中に白か黒かをはっきりさせない「曖昧な空間」を作っておくことが大切だ。創造とは、既定の完成図を目指して論理的に進めばできる類のものではない。自分が何を表現したいかも、表現している間にわかってくる。異なる意見や偶然起こる出来事に対して寛容でないと、既存の考え方から抜け出せない。「曖昧な空間」は、異質なものを取り込み、想像力を働かせる空き地となる。

この空間は『荘子』の渾沌神話にも出てくる。かつて世界を支配する南海帝、北海帝、渾沌帝がいた。あるとき南海帝と北海帝が、のっぺらぼうの渾沌帝を訪れた。手厚いもてなしを受けた二人は、お礼に目・耳・鼻・口の計七つの穴を贈ることにして、渾沌の顔に穴をあけていった。

だが七つの穴が揃ったとき、渾沌は死んでしまった。感覚器官を備えたことで、秩序のある世界に組み込まれてしまったからだ。

南と北。男と女。精神と肉体。正しい、正しくない。世界を二つに分けていくと理解しやすくなる。だからといって混沌の空間を失ってはならない。二分法で分割できない空間にこそ、思いがけない創造をもたらすエネルギーが宿るのだから。