SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報2000/4/17 共感的誘導

夜、子供を寝かしつけるのは一苦労である。生後十カ月ともなると、子守唄などは全く効かない。最近やっと見つけた最善策は、いっしょに横になって寝たふりをすることだ。上手に寝息をたてれば、効果は倍増する。

眠くないはずの子供が、寝ている親の様子を真似して眠ってしまう。この種の模倣行動を、「共感的誘導」という。例えば、先に砂場で遊んでいるグループに途中から参加させてもらうには、「僕も入れて」と頼むよりも、近くに座って黙々と彼らの遊びを真似するほうが有効だ。

そばに近寄って行動を模倣するだけで共感が生ずるというのは、人間の生理にかなった自然な現象だと思う。観念で強制してもだめなのだ。

放っておいたら同化しない異質なものに、共感を利用して一定の方向づけをする。日頃から独立独歩を標榜し、とかく共感性を軽視しがちな私のような人間にとっては、なんとも新鮮な発見であった。

「寝かせる」のではない。子供は自然に「寝る」のだ。育児も同じことだ。「育てる」のではない。自然に「育つ」のだ。親は、子供の持つ力を信じて、ただそっと寄り添うだけでいい。肝に銘じておこう。