SAILING POEMS

If you are good enough, someone will notice.

電通報1998/3/2 心を揺さぶる論文

ある広告賞で「二十一世紀の広告の役割」について論文を書くことになった。有意義な提言をしたいという思いが空回りして、一文字も書けないまま一か月が過ぎた。そんな私を見て、父が言った。「君が書こうとしているのは、役に立つ文章か、それとも美しい文章か」

十九世紀のフランスの作家テオフィル・ゴーティエは、「モーパン嬢」の序文で芸術のための芸術を宣言し、「役に立たないものでなければ本当に美しいとは言えない」と言ったそうだ。「有用なものはすべて醜い。なぜならそれは人の必要を意味し、人の必要はその貧しく弱い本性同様に下劣で胸くそが悪くなるものだからである。家で一番有益な場所は便所だ」というのだ。

会社生活では常に「有用である」ことが要求される。だから、ロジカルで「ごもっとも」な言葉が蔓延している。しかし、こうした言葉のほとんどは、頭では理解できても、心までは届かない。人の心を揺さぶる力は、耳元でささやかれるような、きれいで優しい言葉に宿るのである。

ゴーティエの美意識に感化され、「役に立つ」ことへの執着が消えたおかげで、私の論文は一気に完成した。