SAILING POEMS

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電通報1996/7/29 マルセル・マルソー来日公演

マルセル・マルソーの来日公演を観た。今年七十三歳になる沈黙の詩人、パントマイムの神様である。声の存在しない舞台は黒一色。スポットライトの中で、白化粧の顔と繊細な肢体が動と静を繰り返す。指先から足の裏まで、体のあらゆる部分に主張がある。その沈黙の叫びこそが魂の重みを伝えると、彼は言う。

「鳥飼い」という演目。釣鐘型の大きな檻でたくさんの鳥を飼っている男が、一羽ずつ檻から出しては束の間の自由を与えて悦に入っている。おれ様が鳥に世界の広さを教えてやっていると言わんばかりだ。だが、あるときふとした拍子に檻へ入った男は、中へ閉じ込められてしまう。鳥にまみれて必死にもがくが、どうしても出られない。

マルソーのマイムは、観客に洞察の余地を残している。「鳥飼い」は、広告人として身につまされる警句である。消費者に商品の価値を伝えようと夢中になるあまり、自分が全知の情報提供者であると錯覚したために、視野が偏狭になっていることに気付かないという事態に陥らないようにしたい。

来年はマルソー世界ツアーの年だ。パントマイムの奥にある、人間の本質を探しにいきたい。